Tender Rain

 

 

「だから、誤解だって!」
「うそっ! じゃあ、なんで隠すのっ?」
「隠したんじゃない。お前が勝手に見るから・・・!」
「やっぱり!見られたらこまるんじゃない! もう、しらないっ!」
「待てって!」

引き止める小狼の声を背中で跳ね返す様に、
さくらは彼の部屋を飛び出した。
マンションのエントランスまで下りてきて、
初めて、雨が降り始めていたことに気づく。
さっきまでは、あんなにいいお天気だったのに・・・

一瞬の躊躇の後、さくらは雨の中へと走りだした。

「もう、しらない・・・」
さっき投げ捨てる様に叫んだ台詞を、今度は小さくつぶやきながら。。



休日の午後。
お茶の準備をする彼を待つ、幸せなひととき。
穏やかに流れる時間に、ゆったりと身を埋めている様な・・・
そんな時間に、突然割り込む携帯の着信音。
夢から覚めたような気分で、さくらは音の元を探す。
探し当てた小狼のそれは、テーブルの上で懸命に主を呼び続けていた。

「キッチンまでは聞こえないのかな。
この音は、メールだね。
こっちの携帯は、お仕事用じゃないし・・・」
それは、ちょっとしたいたずら心。。
小狼の方をうかがいながら、さくらはそっと手を伸ばす。
ところが・・・・

「えっ?!」
発信者の名前は、自分の知らない女の子・・・

「お前、なにやってるんだ!」
戻ってきた小狼は、 携帯を握ったまま立ち尽くしているさくらを見て、明らかに狼狽した。
がちゃん、と音をたててトレイを置くと、
さくらの手首を掴み、無理矢理携帯をもぎ取る。
いつもと違うその様子に、さくらは思わず彼を問い詰めてしまった。
そして、喧嘩・・・・・

「わかってる・・・・私が悪いの。
でも、小狼くん、あんなに剥きになるなんて・・・
やっぱりあの子となにかあったんだ。」

さっき捕まれた手首が「じんっ・・」と痛んだ。
でも、それさえ心に比べれば・・・・
耐え難いその痛みは、涙に姿を変えて、後から後からあふれ出てくる。


雨に涙を散らしながら、走り続けた足は、
いつの間にか、ペンギン公園までさくらを運んでいた。
(こんな所まで来ちゃった)
そんな思いが、少しだけ感情を静めると、今度は、切なさが心を支配し始める。
そしてそれは、過去の切なさとシンクロする様に、一つの思い出を蘇らせた。

「あの時も雨の中を走ったっけ。
・・・・あの時も・・・・
小狼くん、追い駆けてきてくれなかったね。」

あの時・・・・
一番大切な思いと引き換えに、
「無」のカードを封印しなければならなかった、あの時。
話を聞いた小狼の口から出たのは、「仕方が無いだろう」という言葉だった。
それは、覚えたての恋心には、あまりにも酷くて・・・
思わず雨の中へ飛び出した。
・・・泣きながら・・・

(私ったら、また同じ事してる。進歩がないね・・・)
小学生の時と変わらない自分の行動に、苦笑がもれた。
濡れたベンチに座って、泣き笑いのまま空を仰ぐ。
灰色の空は、晴れる気配もない。。

(でも、あの時は雪兎さんとユエさんが慰めてくれた。
今日はひとり、だね・・・)
急に訪れる孤独感・・・
同時に、それまで感じなかった雨の冷たさが体に伝わってきて、
さくらは、思わず自分の肩を抱しめた。

(もう、本当に知らないんだから)

「小狼くんのばか・・・」

 

「誰がばかだって?」
その声に、はっとして視線を上げると、
目の前で腕組みした小狼が、さくらを見下ろしていた。

「ばかは、さくらだろ。」
そう言ながら、ドサッとベンチに腰を下ろすと、
小狼の髪から、ぱっと水滴が飛び散る。
彼もまた、ずぶ濡れだった。
あの後すぐに追い駆けて来たのだろう・・・・傘も持たずに。

「ほら、ちゃんと見てみろ!」
差し出される携帯。
「ふざけて女の名前で送ったんだろ。
でも、内容読めば一目瞭然じゃないか。」

その画面には、
『じゃあ、李くん、あしたよろしくね。
よろしくっていうのはね、昔は・・・』

「あっ・・・」
紛れも無い山崎の口調。

名前だけしか見てなかった。
その後、小狼の狼狽ぶりに「かぁっ」と頭に血が上って、内容どころではなくなった。
(私ったら・・・・)
さくらは、急に自分の行動が恥ずかしくなって俯いた。
さっき自分でも子供っぽいと思ったのだから、小狼は、さぞ呆れていることだろう・・・・
そう思うと、自己嫌悪に顔が赤くなる。

「本当だね、ばかは私でした・・・ごめんなさい。」
「でも、ちょっと嬉しかった。」
「えっ?」
「だって、やきもち焼いたんだろ?」
「・・・・小狼くんのいじわるっ・・・・」
雨に濡れて、うなだれるさくらの姿。
それは、いつもにもまして小さく見えて・・・・
小狼は、その肩をやさしく抱きよせる。

「俺には、お前だけだ。今までも、そしてこれから先も。」

飾り気のない言葉だから、きっと心に一番近い言葉。

「私も・・・」

さくらは、小狼を見上げると、
睫に雨のしずくを宿した瞳をそっ・・・と閉じた。

・・・・かさなる唇・・・・

二人の上には、わだかまりを溶かすように、優しい雨が降り続く・・・・

 

「そろそろ帰ろう、風邪ひくぞ。」
「うん。今日は追い駆けて来てくれたんだね。」
「えっ?」
「ううん、なんでもないの。」

(あの時だって、小狼くん、
自分が犠牲になるって決めてたんだよね、私のために。
そして、言ってくれた・・・

「この気持が無くなっても俺、またさくらのこと・・・」

本当に、ごめんね。
小狼くんが私を裏切る事なんて、あるわけないのに。)

 

帰り道。
いつの間にか雨は上がって、西の空には薄日が射している。

「もう、山崎くんたらっ!千春ちゃんに言いつけてやるんだから!」
「やめとけって。格好のネタにされて終わりだ。」
「でもっ!・・・・ほえっ?
じゃあ小狼くん、なんであんなに剥きになって携帯、取り上げたの?」
「そっ、それは・・・・っ! う、裏側に・・・」
「裏? あーっ!小狼くん、あんなに嫌がってたくせに〜」

そこには、この前のデートで撮った、ツーショットのプリクラが。
それは、初めて行ったテーマパークの記念にと、
嫌がる小狼に、さくらが無理に頼んで撮ってもらったものだった。

「なぁんだ、気に入ってたんだ〜」
「ばっ・・・ちがっ・・・!
大道寺の撮影以外では、初めての二人の写真だから・・・その・・・」
からかう様なさくらの口調に、今度は小狼が真っ赤になる番。

 

「冷静に考えれば、不器用な小狼くんが、
私にばれずに浮気できる訳、ないよね〜」
「あのなぁ・・・・・っ!」

 

 


END


《ぷにゅんさんのコメント》

3333のキリ番を踏んだ時に、
なぜかキリリクに添えてしまった駄文です。
ベタな上、よくある内容、そして砂吐きまくり!
キャラの性格違ってるかも・・・っ!
ごめんなさ〜いっ!

リク内容は、「雨の中でキスする二人」です。
キスして欲しいんです!しろねさんの描く二人に!
そして、私の書く話の中では、この二人絶対キスします。
そのために文章書いてると言っても過言ではありません。(笑)

設定は、高校生。小狼はお家の仕事を手伝ってます。
(で、お仕事用の携帯もあるわけですね。)
まあ、雨降って地固まるって事で・・・・(なんじゃ、そりゃ)
失礼いたしました。


3333を踏まれた後にすぐに送ってくださったにもかかわらず、
私がキリリク絵を完成させる事ができなくてアップがものすごく遅くなってしまい
本当に申し訳ありませんでしたー(泣)

ヤキモチ妬いてる桜ちゃんがかわいいのです!
よく確かめないで思い込んで突っ走ってしまうとこもカワイイv(笑)
そして小狼くんー!水も滴るいい男とはまさに彼でしょーwめちゃ萌え〜!!!
チューする時の彼のセリフに悶えます。ああラブラブ…。
でも慌てた理由がプリクラを見られたくなかっただなんて、小狼らしい(笑)

ぷにゅんさんの小説を読んだのはこれが初めてだったのですが、
すごくお上手でびっくりしましたよ。
ホントに素敵なラブラブ小説をありがとうございました〜!!!


 

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